2021.04.25

12.9の意味

「12.9」とは数値ではありません。

小数点の左の数字と右の数字がそれぞれボルトの強さを表します。左の『12』が‘120キロまで切れない’という強さを表します。これを「最小引張荷重」といいます。右の『9』が‘120キロの9割→108キロまでは伸びても元に戻る’という強さを表しています(108キロを超えると伸びきって元には戻りません)。これを「降伏荷重」または「耐力」といいます。

変形しても元にもどる  → 弾性変形
変形して元にもどらない → 塑性変形

例えば、「ねじがバカになる」というのも塑性変形です。

「10.9」 → 100キロまで切れずに9割の90キロまで元に戻る
「8.8」 → 80キロまで切れずに8割の64キロまで元に戻る
「4.6」 → 40キロまで切れずに6割の24キロまで元に戻る

JIS規格では、次の10種類の強度区分が定められています。

3.6 4.6 4.8 5.6 5.8
6.8 8.8 9.8 10.9 12.9


力の単位は、1平方ミリメートルあたりです。
2021.04.24

11Tの意味

‘110キロまで切れない’という最小引張荷重だけを表しています。

「8T」 →80キロまでは切れない
「7T」 →70キロまでは切れない
「4T」 →40キロまでは切れない
11T、8T、7T、4T などの強度区分は「降伏荷重」は表しません。
「11T」と「10.9」は“0.1の差”でほとんど同じと誤解されやすいのですが、実際には引張強さが110キロと100キロで10キロの差があります。

尚、〇〇Tという強度区分は、1999年4月1日で廃止となりました。
2021.04.23

表面処理の種類〈処理方法〉

「電気メッキ」
電解溶液中で品物を陰極として通電し、表面にメッキ金属を析出させるもの
☆亜鉛メッキ・ニッケルメッキ・クロームメッキetc

<参考> 亜鉛メッキを例として電気メッキの原理を説明します。
(1) メッキ液の中にメッキしたい品物を入れ陰極(-)につなぎます。メッキになる亜鉛の方は陽極(+)につなぎます。
(2) 電気を流すと陽極(+)の亜鉛から亜鉛イオン(Zn+)が液中に溶け出します。
(3) 液中の亜鉛イオン(Zn+)は陰極(-)の品物に引き寄せられ電子(-)を受け取り、亜鉛イオン(Zn+)から亜鉛に変わり、品物の表面に付着します。この変換が次々と行われ、次第に亜鉛の膜を貼っていくことを電気亜鉛メッキといいます。

「無電解メッキ」
溶液中での還元反応を利用して品物の表面にメッキ金属を析出させるもの
☆無電解ニッケルメッキ(カニゼンメッキ)etc

「化成処理」
金属をある種の溶液中に浸漬し、品物の表面にメッキ金属を析出させるもの
☆クロメート処理・パーカーetc

に分けられます。
2021.04.22

防錆用表面処理とは

元来、表面処理は鉄素地の錆を防ぐ為に施されていました。 その意味では、いわゆる生地に着いている油も表面処理と言えるかも知れません。

「パーカー」⇒防錆力 弱

「黒染め」および「パーカーライジング」の総称です。
どちらも油っぽくベタつきがあり、防錆力は「生地よりはまし」という程度です。「黒染め」は四三酸化鉄被膜で色が黒く、「パーカーライジング」 は燐酸塩被膜で、やや茶色です。また「パーカーライジング」は表面が平滑になるため通常、塗装の前処理として使用します。 弊社で「パーカー」として在庫販売しているのは「黒染め」です。

「電気亜鉛メッキ」⇒防錆力 中(電気亜鉛メッキだけだと 弱)

下地として使用され表面にクロメート処理などを施して耐食性や外観を向上させて使用します。

「クロメートメッキ」⇒防錆力 中

正しくは「有色クロメート」と言います。下地に電気亜鉛メッキを 貼り、その上に化成処理であるクロメート処理を施します。 クロメート被膜は黄褐色です。

「グリーンクロメート(オリーブメッキ)」⇒ 防錆力 中

下地に電気亜鉛メッキを貼り、燐酸系の溶液でクロメート処理をすると緑色になります。亜鉛+クロメートのメッキの中では最も耐食性が良好です。

「ドブメッキ」⇒防錆力 強

溶融亜鉛メッキ。ドロドロに溶かした亜鉛の中に“ドブ”っと漬けて着けるメッキです。また高温の液のなかで天ぷらの衣のようにメッキが着くことから、「天ぷらメッキ」と呼ばれたりもします。コストの割に優れた耐食性がありますが、メッキ厚はかなり厚く不均一で表面がデコボコしている為、ねじ山のゲージ管理はできません。また雌ねじの方はオーバータップにしておく必要があります。製品同士がくっついてしまうこともあります。(グレー色)

「ダクロタイズド」⇒防錆力 強

主成分の亜鉛とクエン酸を含んだ処理液に漬けて塗装した後、加熱し素地に焼き付けます。電気亜鉛メッキと比べ耐食性はもちろん耐熱性にも優れています。また工程中、酸を使わないので水素脆性の心配はありません。

「ラスパート」⇒防錆力 強

下地に電気亜鉛メッキを貼り、密着性を良くする化成処理をし、セラミック材を塗装した後、加熱し素地に焼き付けます。 耐食、耐熱性に優れています。特に耐酸性、耐アルカリ性に優れているため屋外用品に適しています。 (シルバー、ブラック、グレー色等、色づけ可能です。)

「ステンコート(ジンロイ+Kコート)」⇒防錆力 強

亜鉛-ニッケル合金メッキのジンロイを下地に光沢クロメート処理をしその上に無色透明の防錆コーティング剤のKコートを施します。 見た目も耐食性もステンレスのようになるので「ステンコート」と呼ばれています。黒色の「ブラックコート処理」もあります。 ステンレスの焼き付防止用コートと混同されやすいので注意が必要です。

「ストロンジンク」⇒防錆力 強

上記の「ジンロイ」と似ていますが、これは亜鉛-鉄の合金メッキ です。

「KMコート」⇒防錆力 強

通常のメッキを施した上に特殊なKMコート処理をし焼き付けます。耐酸性、耐熱性に優れ、自己潤滑性と耐摩耗性を有するので機械部品に適しています。

「ポリシール」⇒防錆力 強

3種類の特殊皮膜が積み重なった被膜構造になっており、耐食性、耐薬品性に優れています。また様々な色づけが出来ます。
2021.04.21

装飾用表面処理〈シルバー色〉

《シルバー色》
日本人は何故か白く光るシルバー色が好きなようで、広範囲にこの色が使われています。

「ユニクロメッキ」

正しくは「光沢クロメート」といいます。下地に電気亜鉛メッキを貼りフッ化物を含んだ溶液でクロメート処理を施します。クロメート被膜 はシルバー色です。耐食性は有色クロメートよりやや劣ります。

「ニッケルメッキ」

装飾用に広く用いられるメッキで、キラキラ輝く光沢を持ちます。 しかし、電気亜鉛メッキ+クロメート処理程の防錆力はありません。 耐食性と外観を向上させる為に、下地に銅メッキや下地用ニッケルメッキを貼り、その上に光沢剤入りのニッケルメッキを貼ります。 下地用ニッケルメッキは柔らかく、つきまわりが良好です。(弊社在庫品は銅下ニッケルを採用しています。)

「クロームメッキ」

下地用ニッケルメッキを貼り、その上にニッケルメッキを貼り、さらにその上にクロムメッキを貼ります。ニッケルメッキより重厚な光沢に仕上ります。耐食性が特に優れているため、大気中ではほとんど変色せず、長期の装飾性の維持が可能です。また硬度が高く、 耐摩耗性も良好です。 しかし、つきまわりが悪く、一度メッキした物を選別し、つきの悪い物はもう一度メッキをしています。

「バフクロームメッキ」

美観をさらに向上させるためメッキ前にバフ研磨をかけ、素地の表面を平滑にしてからクロームメッキを貼ります。 光沢は最良で鏡のように仕上ります。

「すずコバルトメッキ」

すずとコバルトの合金被膜です。クロームメッキの色合いに近く代用として利用されます。耐食性はクロームより劣ります。 しかし、つきまわりが優れているためクロームメッキよりはるかに量産が可能です。
2021.04.20

装飾用表面処理〈ゴールド色〉

《ゴールド色》
何と言っても一番ゴージャスな色はゴールドです。

「本金メッキ」

下地にニッケルメッキを貼り、その上に本物の金を貼ります。 金は錆びません。また熱や電気を非常によく通しますので電子部品等に利用されます。 上棟式用の金ボルト等の装飾品にも利用されます。

「黄銅メッキ」

下地にニッケルメッキを貼り、その上に黄銅を貼ります。 黄銅は銅と亜鉛の合金です。金と色合いが似ているので、これを代金メッキともいいますが、金と比べ黄色っぽい色です。

「代用金メッキ」

下地にニッケルメッキを貼り、その上に黄銅よりも銅の比率が高い銅と亜鉛の合金を貼ります。黄銅メッキに比べ赤みがあり、より本物の金に近い色合いに仕上ります。

「ゴールドメッキ」

下地に電気亜鉛メッキを貼り、その上に染色タイプのクロム酸のクロメート被膜で金色に色づけします。代用金メッキの色合いに比べやや安っぽい感じのする色で、クレヨンの金色のような色です。なお代用金もゴールドも色合いとして本金メッキの代用として利用されますが、金属としての金の性質はないので注意が必要です。

「クロメートメッキ」

前述の有色クロメートも最も安価なゴールド色と言えます。

「キリンス」

黄銅に行う酸洗いで、キラキラ輝く光沢に仕上ります。 耐食性はよくありません。
2021.04.19

装飾用表面処理〈ブロンズ色〉

《ブロンズ色》
近年アルミサッシ等で人の心を落着ける茶色が増えています。

「茶ブロンズメッキ」

いわゆるGBメッキ。Gはジャーマン、Bはブロンズまたはブラウンの略だとか。ドイツ軍の戦車の色という説もあります。 GBメッキは鉄とステンレスでは処理方法が違い、鉄の場合、下地に銅メッキを貼った後、特殊な薬品で色づけ研磨をします。 ステンレスの場合は熱処理によりステンレス自体を変色させます。
弊社ではステンレスの場合、KLB(ライトブロンズ色)、KOB(ブロンズ色)、KSB(ダークブロンズ色)というように色の濃さにより名称を分けています。
2021.04.18

装飾用表面処理とは〈ブラック色〉

《ブラック色》
AV機器等には黒色が多く使われているようです。また、相手材に対しネジの色の方が濃いとネジが目立たないので、ネジを目立たなくするために茶色の相手材に対し黒いネジというパターンもあるようです。

「黒色クロメート」

下地に電気亜鉛メッキを貼り、硝酸銀などを含んだ溶液でクロメート処理をすると黒色になります。銀が黒色を作っています。比較的安価に黒色のメッキができるため広く利用されています。耐食性は有色クロメートや光沢クロメートより劣ります。「酢酸系」と「燐酸系」があり、「酢酸系」は仕上がりは綺麗ですが耐食性が悪く、「燐酸系」は耐食性は良いが色が悪い。弊社の物は酢酸と燐酸を混ぜ、中間をねらっています。弊社では「BC」と表しています。

「黒ニッケル」

下地用ニッケルメッキを貼り、その上にニッケルメッキを貼り、さらにその上に黒色の亜鉛-ニッケルの合金メッキを貼ります。このままでは変色しやすいので、さらにニスで変色を防ぎます。耐食性はニッケルメッキとほとんど同等です。輝きのある黒色に仕上ります。

「黒クローム」

下地用ニッケルメッキを貼り、その上にニッケルメッキを貼り、さらにその上に黒色のクロムメッキを貼ります。 タコ掛けと呼ばれる1本づつ吊す方法でメッキをしています。そのためコスト高ですが重厚な漆黒の色合いに仕上ります。耐食性もクロームメッキと同様優れています。

「パーカー」

前述のパーカーも色合わせの為に用いられることがあるようです。

「SSブラック(KBB・BL・BK他)」

ステンレスを特殊な薬品で黒く着色処理することでステンレスに対する「黒染め」ということです。
2021.04.17

装飾用表面処理とは〈その他の色〉

《その他色合わせ》
巷には様々な色があふれています。そこでネジもそれらの色に合わせる必要があるようです。

「頭部焼付塗装」

ネジは締結後、目に見える部分は頭部だけということが多いため頭部だけを塗装します。頭部に上から塗料を吹き付け、加熱して密着させる焼付塗装を施します。六角ボルトの場合、上から一度塗料を吹き付けるだけでは側面には行き渡らず、工数が増えるのでコスト高になります。

「ラスパート」「ポリシール」

前述のラスパートやポリシールも塗料を用いますので色合わせが出来ます。

「カラーメッキ」

電気亜鉛メッキを貼った後、一旦、乾燥させます。その後クロメート処理を施します、次に薄いアルカリでクロメート被膜の表面を少しはがします。こうして出来たクロメート被膜上の小さな穴に染料を染め込んで色づけします。
<参考> クロメート処理について
亜鉛は酸化しやすい金属で、鉄に亜鉛を貼ると、亜鉛が酸化することにより鉄を酸化から守ります。しかし亜鉛は酸化するともろくなり、このままでは実用的ではありません。そこでクロム酸を用いて亜鉛の表面に薄いクロム酸と亜鉛の被膜を作り、亜鉛を酸化から守ります。この処理のことをクロメート処理といい、できた被膜をクロメート被膜といいます。
2021.04.16

その他の表面処理とは

「無電解ニッケルメッキ(カニゼンメッキ)」

ニッケルとりんの合金メッキのことです。溶液中での還元反応を利用して品物の表面にメッキ金属を析出させる処理法です。膜厚のムラなく均一にメッキでき、また非金属にもメッキできます。

「パシペート」(対ステンレス)

ステンレスが錆びにくいのは、ステンレス中に含まれるクロムが酸素と結合して表面に酸化クロム被膜(不働態被膜)を作るからですが、稀硝酸に浸すことで、この不働態被膜を化学的に作る処理のことを「パシペート処理」といいます。

「焼き付き防止コート」(対ステンレス)

ステンレスは熱伝導率が低く、熱膨張係数が大きいため、締結作業を行うとその摩擦熱により焼き付き(かじりつき)が発生し雄ネジと雌ネジが互いに食い込んで回せなくなることがあります。それを防ぐために表面に潤滑被膜を施す処理が焼き付き防止コートです。一般的にフッ素樹脂をベースにしており、Sコート等各社独自の名前が付けられています。

「アルマイト」

アルミニウム素地に、電解で得る酸化被膜で、耐食性、耐摩耗性をもたせる処理のことです。この被膜を染色することにより装飾性をもたせることも出来ます。なお、アルマイト処理を施すと通電性はなくなります。

「ベーキング」(表面処理ではありませんが参考として)

酸洗いや電解によって発生した水素が金属の内部に入り込み、組織をもろくする(水素脆性)のを防ぐ為に180゜C~200゜Cで4~8時間加熱して水素を追い出す処理のことです。熱処理を施された高炭素鋼に対し、電気亜鉛メッキ工程とクロメート処理工程の間に行います。